脱ハンコによる電子契約への移行後も
残るデータ転記作業を「bindit」で自動化
2023.01.10
同部では、契約書類の審査・管理といった主要機能において、デジタル化による業務効率化に向けて、コロナ禍の前から電子契約の「クラウドサイン」を導入・運用しています。
しかし、デジタル化により、新たに生じた作業や、業務フローにおける二度手間や人手を介した非効率な作業が発生していました。
この課題に対し、同部ではノーコードでSaaS間の連携を実現する「bindit(バインドイット)」を採用。“電子契約フロー”と“法務相談フロー”の2つで自動化を実現しました。
「bindit」検討に至った背景、課題
効果
- 人的作業で1件あたり5から10分かかっていた転記作業を月間100件以上自動
- ITシステム構築の専門スキルを持たないビジネス人材だけで構成される管理部門でも、IT部門の手を煩わせることなく、ワークフローの自動化をセルフで推進
- 人的作業だと漏らしたり遅れてしまいがちな更新作業をリアルタイムで自動化
目次
「bindit」を導入いただいた
部門の役割・業務内容について
ユニリタ法務部門のコロナ奮闘記
本社管理部門の組織として前記記事を公開している法務部における、契約審査・締結フローにある人的作業を機械化・自動化する目的で、2022年3月の「bindit」β版公開を機に利用を開始しました。
企業法務において、契約書類の審査・管理はコンプライアンスの名が示す通り主要な業務ですが、加えて、経営ガバナンスのチェックというさらに大きな役割がある中で、ビジネスプロセスのそこかしこに目を配らなければなりません。
法律は、私たちが社会生活を円滑に送ろうとする上での最低限のルールとして示されていますが、マナーやモラルといった個々人の生活環境や価値観に基づくものは一定の基準による明文化が難しく、一律のルールで解決できないことの方が多い中で、都度都度・是々非々で対処しなければならない事案は数多くあります。
滝口 賢勝氏
企業法務も同様で、社内の法律ともいえる規程や規定といった文書だけでは、ビジネス現場で生じるすべての事案に明確で具体的な答えを示すことは難しく、元になっている法令があればその主旨の解釈からはじまり、自社のビジネスドメインや業種特性の理解といった経験知の中で属人化が避けられない領域でもあり、ユニリタが得意とする「IT活用」の前提ともいえる「標準化(マニュアル化)」の難しさを感じる日々でもあります。
「bindit」導入前の環境について
コロナ禍の前から電子契約の「クラウドサイン」を導入・運用しており、お客様やお取引先のご理解・ご協力もあって契約書類の締結フロー自体はオンライン対応が進んでいました。
具体的には、2020年度に月平均で50件程度であった電子契約の締結数が、2022年度上期においては月平均100件以上、多い月だと200件を超えるまでに増加しています。
このように 電子化による部内業務効率化が進む中で、電子化をしたことによって新たに生じた作業や、業務フローにおける二度手間や人手を介した非効率な作業などが、より浮き彫りになってきました。
例えば、クラウドサインで電子契約を送信する際には、社内担当者から伝えられた送り先のメールアドレス・氏名、送信対象PDFデータなどを、法務部がクラウドサイン上に都度入力する必要があります。電子契約の締結数が増加する毎に当該入力作業の工数も増加していきますし、これは多くのクラウドサインユーザーが抱える悩みではないかと思います。
また当社では、契約書のリーガルチェック依頼など、社員が何らかの法務相談をする際には、法務相談受付表というスプレッドシートに案件を記入したうえで、それとは別に法務部に対して法務相談依頼をメールするという作業の二度手間が生じていました。
「bindit」採用の決め手、評価いただいた点
実は、binditの開発段階からクラウドサインによる電子契約手続きに付随する業務フローについてヒアリングを受けていました。その結果、Googleドライブやスプレッドシート、Salesforce、GmailやSlackのように、クラウドサインを使う前後にある業務フローで自分たちがすでに使っている SaaSアプリケーションを連携対象としてラインナップしてもらえたので、ビジネス現場の生の声から生まれた「bindit」のβ版が公開されたと同時に利用を開始しています。
「bindit」導入時に苦労された点、思いもよらなかった問題など
通常のお客様と同様、Webサイトで公開されている申し込みフローで、βトライアルのアカウント開設まで進みました。
いざフロー作成を開始する段階になっても操作画面がシンプルなので、 私たちのようにITエンジニアではない事務系スタッフでも、直感で何ができるのか・できないのかがすぐに理解できましたし、実際に操作を行ったメンバーは皆すぐに使い方をマスターすることができました。
APIプログラミングができるようなIT人材が部内にいれば、「bindit」のようなツールを使わなくても済むのでしょうけど、管理部門や営業部門のようにビジネス人材だけで構成される組織では、「bindit」のようなツールがあれば忙しいシステム管理者の手を煩わせることなく、ワークフローの自動化をセルフで推進できるのですから大助かりです。
「bindit」導入後の効果について
具体的には以下の①②のフローを実現しました。
① 電子契約フロー
これまで当社で電子契約を送信する場合には、事前に担当者から法務部に対して送信先の情報や契約書PDFの情報を伝えてもらい、その後に法務部が手作業でクラウドサイン上に情報を入力したうえで電子契約を送信する作業をしていました。「bindit」を活用することで以下のフローを実現できました。
新たに電子契約申請用のGoogleフォームを作成し、担当者はこのフォームから各種情報を入力します。担当者がフォームに入力すると全ての情報が自動でクラウドサイン上に下書き保存されるフローとなりました。法務部は毎日決まった時間にクラウドサインの下書きに保存されている情報を確認して、問題が無ければ送信ボタンを押すだけという手続きに省略することができました。
これまで手作業での転記にかかる時間が1件当たり5~10分かかっており、これをそのまま省略することができたわけです。
② 法務相談フロー
当社では、法務相談を受ける場合に案件管理の観点から、スプレッドシートで作成した法務相談表に案件概要を入力したうえで、それとは別に法務部宛にメール依頼をする必要がありました。「bindit」を活用することで以下のフローを実現できました。
新たに法務相談投稿用のGoogleフォームを作成し、担当者はこのフォームから各種情報を入力するだけで、全ての情報が法務相談表(スプレッドシート)に自動で反映されて、さらに自動で法務部宛にメールが届くようなフローになりました。
つまり、 法務部にとっての案件管理の必要性(スプレッドシートで管理)と相談者にとっての相談手続きに関する入力作業の二度手間の解消を実現できたわけです。
また、上記①②に共通して、Googleフォームへの記載から自動でスプレッドシートへの転記がなされるのですが、このスプレッドシートが①では電子契約管理表となり、②では法務相談管理表として活用できるという効果がありました。
業務フローのベースになる管理帳票が固まれば、あとはデータの更新がどれだけ抜け漏れなく正確に、かつリアルタイムで記録し続けられるかがカギですが、「bindit」によるリアルタイム更新作業の自動化は、ヒトが漏らしたり遅れてしまいがちな部分を補完してくれるという観点からも、事前に想像していなかった効果の一つと捉えています。
例えば、管理帳票にしているGoogleスプレッドシートは、基本機能として個々人がデータの更新通知をメールで受け取ることができますが、それだけでは属人対応のままになってしまいます。
「bindit」を使うと、データ更新通知を法務部メンバーが参加するSlackチャンネルやGmailのグループアドレス宛てに送ることができるようになりますから、例えば休暇中のメンバーのバックアップも難なくこなせるようになります。
何よりも、「bindit」の利用によって自分たちの業務フローには少なからず改善余地があることが私も含めた全メンバーの共通認識にできたことが、目には見えないながら最も大きな効果と捉えています。
藤谷 宜樹氏
これがいわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)の中で言われる「デジタライゼーション」の恩恵なのかと、実感できるようになりました。
さらに、大企業の基幹システム保守を長年行ってきた当社の強みでもあるサポート体制がbinditチームにおいても生かされており、質問体制等のサポート体制がとにかく手厚く、手前味噌ながら当社の強みを実感している次第です。
直近のIT化・自動化における課題、計画など
まだ、標準化・機械化・自動化というIT活用の恩恵が実感できた段階ですが、まずは自分たちの職務範囲の中にどれぐらいの業務フローがあるのか、洗い出しと視覚化の作業から始めたいと考えています。
幸いにもユニリタには「Ranabase」というフローチャート作成ツールがあるので、用意されているテンプレートなども参考にしながら、自分たちの業務フローを棚卸ししてみるところから、ボトムアップ型のビジネス変革に取り組んでいこうと思います。
IT化・自動化に対する中・長期的な展望について
先ほどお話ししたように、企業法務という職務は属人的な仕事という色合いが強かった職域です。
ユニリタはもちろんグループ会社の中でも、職域によっては、サイロ化・部分最適化しているものが少なくないと感じています。
ユニリタグループとしての経営ガバナンスという観点からも、会社間を横断したバックオフィス部門におけるIT活用の方向性について考えていきたいと思います。
今後のbinditに期待すること
今回お話ししているような活用例が、お客様はもちろんのことグループ従業員やお取引先などステークホルダーの皆さんの目に届くように、法務部としても実践した経験をもとにPRに協力できることがないか考えてみたいと思っています。
ユニリタのようなITベンダー/IT人材の目で見ると、「bindit」は「iPaaS」(アイパース)というカテゴリーのツールですが、私たちのようなIT利用者/ビジネス人材から見れば「イパース???」となってしまってそっぽを向かれてしまうでしょう。
ITを活用し得られるであろう恩恵を、多くのビジネス人材に知っていただかないのは、経営資源の有効活用の観点からももったいないことこの上ないわけですから、日本にも便利で役立つツールがあることを、より多くの人たちに知っていただきたいと思います。