本稿は「なぜ、RPAは労働生産性の向上に寄与してくれないのか?」の後編です。

RPA のように高機能だけれども導入・運用が複雑・煩雑な自動化ツールはIT人材や情報システム部門にお任せするとして、bindit:バインドイットなら、ビジネス人材/IT利用者のデスクトップに残っている SaaS:クラウドアプリケーション間の作業フロー自動化を、誰でもカンタンに導入・運用できます。
目次
- 前編
- 売上・利益に貢献しなければ労働生産性は向上しない
- 作業効率と労働生産性を混同すると目標設定を見誤る
- 後編 ※本稿
- 機械化・自動化によって生み出された「時間」を従業員にとっての「付加価値」に変えられるか?
- まとめ
機械化・自動化によって生み出された「時間」を従業員にとっての「付加価値」に変えられるか?

前編では、組織にとっての付加価値とは「利益=収入-支出」であると述べました。
それでは、私たち従業員一人ひとりが手に入れたい「付加価値」にはどんなものがあるでしょうか?
- 空き時間
- 休日・休暇
- 年収
- 可処分所得
- 将来への希望
あえて番号はつけませんでしたが、皆さんが所属される組織にとって難易度の低そうな順にしてみました。
所属組織が関与できるのは最初の3つまででしょう。
4つ目の「可処分所得」は私たちの家計次第、5つ目の「将来への希望」は、介護・年金といった社会保障の裏付けも必要になってくると思われ、個々の組織レベルではいかんともしがたい国家レベルの課題でしょうから、この5項目のどこにフォーカスされるのか、あるいはオリジナル項目を付け足すのかは、皆さんの価値観にゆだねておきます。
ただ、この中で最も難易度が低そうで、その逆に自由度が高そうと筆者が見積る「空き時間」とその使い道については、ぜひこの機会に考えていただきたいところです。
わかりやすい例であれば、Googleの創業初期にあった「20%ルール」でしょうか。
bindit の連携対象アプリケーションでもある「Gmail」も、この20%ルールから生み出されたプロダクトだそうです。
グーグルの20%ルールは、同社が抱えるプロジェクトが相対的に多くなかった当時、グーグルの企業文化の一部だった。IPOまでに立ち上げられた主要なプロジェクトには、「Search」「AdWords」「Toolbar」「News」「Product Search」「Orkut」「Gmail(ベータ版)」などがある。ほかに、「Print」(後の「Book Search」)がIPOの数カ月前に始まっていたほか、その後「Groups」と「Blogger」になる2社が買収されていた。
思い起こせば2005年の春頃、当時はまだβ版で招待制だった Gmail の招待メールが知人から届き、それまであったメールクライアントやWebメールとは明らかに異なるシンプルなコンセプト「掲示板×インターネットメール×検索」を体感した時に、「これこそ、私たち日本人が忘れかけていたイノベーション:innovation(新結合)だ!」と、一人で歓喜したことを憶えています。
まさしく、モノが行き渡った成熟市場におけるイノベーションとは、それまでの成長市場にあった“発明”のような技術革新はほぼ出尽くした状態になり、日々の自分たちの不満の中からイノベーションのタネを発見し、それまでになかった組み合わせのアプローチで顧客の不満足をも一気に解消するものということですね。
筆者が20%ルールの存在を知ったのは、日本経済がバブル崩壊からの後始末で右往左往を繰り返す中で、リストラ不況/コンプライアンス不況という嵐が吹き荒れていた時代、組織に所属する全員が常にカッツカツのパンッパンな緊張状態にあった頃です。
そんな筆者の妄想とは違う次元なのでしょうけれども、わかりやすい例を見つけましたので、20%ルールと合わせて引用させていただきます。
かつて、炭鉱には「スカブラ」と呼ばれる人たちがいた。
「スカッとしてブラブラしている人」の略だという説がある。
みんな一生懸命に炭鉱で働いているのだが、100人のうち5人ぐらいは、何をするでもなく機嫌の良さそうな風情でブラブラとそのへんを歩いている。
それで同じ給料をもらっているのだから怒られそうなものだが、誰も文句は言わない。
スカブラの人たちは、「平時」は何もしないけれど、いざ事故やトラブルなどが発生するとすぐに駆けつけてみんなを助けてくれるからだ。
アリなどの集団でも同様で、観察すると実際には働いていないアリが一定の比率でいるそうだ。
しかし、常に100パーセントのアリが働いている状態だと、何かが起きたときに余力がなく集団全体が滅びてしまう。
今の社会や企業でも、「スカブラ」的な人たちを抱えることは、その集団全体を強くすることになると思う。
何をやっているのか誰が見てもわかる人たちだけではなく、何をやってるのかよくわからない非真面目路線の人たちの存在も許容するのだ。
まとめ:空き時間を生み出して、心の中のハンドルのアソビを取り戻そう!

本稿における筆者の意図はただこれだけ、ITツールは魔法の杖などでは決してないのですから、RPAを導入した“だけ”で労働生産性を向上させられるとお考えの方がもしいらっしゃったら、ぜひこの機会にゼロ・リセットしていただきたいのです。
ITツールは、第四次産業革命のテーマ「知的労働の機械化・自動化」そのもの、すなわち標準化されたビジネスプロセスを機械化・自動化させることに役立つもののはずですから、その結果生み出された空き時間を、皆さんの所属組織の「心のハンドルのアソビ」にしていただくことで、大地にしっかり根を張りつつ、市場に吹き荒れる大嵐や大地震に対してもしなやかに揺れ動きながら、長期的な事業成長を果たしていっていただきたいと願っております。
本稿の冒頭で触れたように、もしRPAの導入で壁にぶち当たってしまっている方がいらっしゃったら、ITベンダーさんはもちろんのことシステム管理者さんの手を借りずとも従業員の皆さんがセルフサービスで活用できる、bindit の無料トライアルを試してみてください。
チリも積もれば山となる
一人ひとりにとっては小さな空き時間でも、職場の仲間たち全体であれば結構な重複作業が削減されるなど、組織の中に心のアソビを生み出すのにきっと役立てていただけるはずです。
アメリカの心理学の研究結果に「幸せな社員は、不幸せな社員よりも創造性が3倍になり、生産性は31%高い」というものがある。時間に換算すれば10時間の労働が7時間になるということだ。小売業では、売り上げが37%上がったという報告もある。さらに幸福度が高い社員は、そうでない社員よりも欠勤率が41%、離職率が59%も低く、業務上の事故が70%少ないという研究結果もある。
では、なぜ幸せであることがパフォーマンスに影響するのか。それは「視野の広さ」によるものだとする研究結果がある、と前野氏は明かす。
「何か失敗したとき、そのことで頭がいっぱいになってしまうのは、視野の狭い状態です。幸せな人は視野が広く、失敗した自分を遠くから眺めて落ち着くことができます(メタ認知)。なおかつ、そこから自分のするべきことを理解して動けるため、生産性も創造性も高くなると考えられます」
以上、 この筆者は伝えたいことが多すぎてどうしても長文になってしまいがちですが、皆さんにとって何らかの参考になる情報や発見などはありましたでしょうか?
またいつの日かこのサイトを訪れていただいた際に、新しいコラムでご一緒できましたら幸いです。
参考文献・ニュース ※適宜追加
- 労働生産性の国際比較2021
- Googleも実践する「20%ルール」とは。、東大大学院教授が提唱する“妄想”の可能性
- TIS、ダイキン工業の全社規模のRPA展開を約1年半で完了し、累計10万時間分の手作業の自動化達成を支援
- 「仕事をなくす仕事をするのがソフトウェアエンジニア」自動化により急速に進む、人間の仕事の置き換え
- 案外うまくいかないRPA、失敗はどう巻き返す? 運用見直す企業が続出のワケ
- その業務、人が時間を費やす必要はありますか? 「自動化」の勘所
- NTTテレワーク原則化 イノベーション維持が課題
- 経産省の「未来人材ビジョン」が賛否両論
- 日本の労働生産性低下の原因と改善策への意識を探る独自調査を実施
- 生産性や創造性の向上のみならず。「幸せに働く社員」がもたらす莫大な利益
- 「仲良く貧乏」を選んだ日本は世界に見放される 1人当たりGDPは約20年前の2位から28位へ後退
- 自動化で避けるべき、よくある10の間違い
- RPAの位置付け、全体最適化のためのツールという企業が増加
- ハイパーオートメーション実践の鍵 ~これからの自動化の方向性と反復可能な自動化ライフサイクルの重要性
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